代表挨拶
保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム (HEASNET)

会長 大山 永昭
 インターネットやパソコンに代表される情報通信技術の著しい発展と普及は、既に我々の日常生活に入り込み、これからの社会を支える重要な基盤の一つになっています。政府においてもこれらの情報通信技術を活用し、安全・元気・感動・便利なIT 社会を構築するために積極的に「 e-Japan 戦略」に基づく施策を展開しています。なかでも、平成 17 年 2 月に公表された「 IT 政策パッケージ-2005 」では、我々が安心して健やかな生活をするのに欠くことのできない保健・医療・福祉分野での IT の利活用を推進する旨が明記されています。
 医療分野における IT の導入は、長年かけて進められ、既に多くの医療機関等には、事務・会計業務などを行う HIS やディジタル化された放射線画像等を取り扱うPACS、さらには電子カルテシステムなどが導入されています。さらに近年では、遠隔医療や地域医療などを実現するために、医療関連機関のネットワーク化も開始されています。
 現在、政府によって推進されている電子政府の構築プロセスには、 3つのステップがあります。すなわち、第1ステップは行政機関内の情報化であり、第2ステップは行政機関間のネットワーク化と電子署名の導入、そして第3ステップはインターネットを介した官民の情報交換です。第1ステップは、行政機関のOA 化に代表される各種情報システムの導入であり、第2ステップは、中央政府における KWAN (霞ヶ関 Wide Area Network の略)と GPKI( Government Public Key Infrastructure の略)、および地方自治体における LGWAN ( Local Government WAN の略)と LGPKI の構築です。よく知られているように、現在はこれらを使って公文書などの電子的な交換や行政情報の共有化などが開始されています。また第3ステップの具体例としては、オンラインの申請申告があげられ、パスポートのオンライン申請や税のオンライン申告などが開始されている現状から、電子政府の構築は、既に第3ステップまで進展していることが分かります。
 この構築手順のアナロジーを保健・医療・福祉分野の情報化に適用すると、現状は第2ステップが始まったところであり、本分野における情報化を本格的に推進するためには、電子カルテ等の導入に加えて、医療関連機関のネットワーク化と HPKI( Healthcare PKI の略)の実用化が不可欠であるといえます。幸いにして、後者の HPKI は既に MEDIS(財団法人医療情報システム開発センター)などにより、認証サービスの実運用の準備がなされているのに対し、前者のネットワーク化はあまり大きく進展していません。その理由としては、ネットワーク化すべき病院、診療所、薬局、保険組合などの医療関連機関の総数が 20 万を超えていることや、取り扱う情報が機微な個人情報を含むためネットワークの安全性が不可欠であることなどがあげられます。
 本コンソーシアムは、次世代 IC カードが持つ 2 階層 PKI 技術などを使って、任意の地点間に簡便かつ確実な相互認証と秘匿通信を可能とするオンデマンド VPN を実現する新たな技術の普及と、 HPKI との連携を実現することを目的としています。本コンソーシアムの活動により、保健・医療・福祉分野の情報化の第 2 ステップが速やかに進展することを期待しております。